収益物件の融資期間

 
太陽光発電所や賃貸マンションなど、一般的な収益物件としては、どの様な種類があるかについては別ページでご案内していますが、ここでは、融資を受けて購入する場合において、産業用太陽光発電所とマンション投資と比較しつつ、融資期間がどうやって決まるのかを順にご説明していきたいと思います。

 
融資に関して太陽光発電投資では大きな問題は起きていませんが、一棟建ての投資用マンションにおいては、ずさんな融資審査や融資期間の設定によって、かぼちゃの馬車事件などニュースで取り上げられるような様々な問題が生じてきております。この様な背景から、金融機関では金融庁の指導の下、適切な審査と収支シミュレーションを行って、物件の収益性に適合した金額及び期間設定で融資の推進が進められると思われます。

 

<Point 1>耐用年数を把握しましょう

耐用年数とは?

建物や設備の耐用年数というのは、「法廷耐用年数」を指しています。法定耐用年数とは、用途や構造、素材の特性と老朽化の進行具合などを考慮して、「これくらいの期間なら利用できるだろう」という期間が導き出された「税法上の法廷耐用年数」という事になり、用途(産業用や自家用かなど)、木造や鉄筋・鉄骨など素材によって年数が定められています。投資という観点で言い換えれば「これくらいの期間なら収益を生むだろう」という基準になります。

 
収益物件による耐用年数の違い

収益物件の構造や種類・素材によって耐用年数は違ってきます。
ここでは、投資物件として産業用太陽光発電所の場合と、建物を一覧にしてみました。

 
産業用太陽光発電設備 17年
建物(木造) 22年
建物(軽量鉄骨) 27年
建物(重量鉄骨) 34年
建物(鉄筋コンクリート) 47年

 

<Point 2>融資期間は原則、耐用年数の範囲内

耐用年数の範囲内で融資期間が決められます

金融機関が融資判断をする際、法定耐用年数の範囲内で期間が決められます。基本的な考え方は、物件の担保価値を慎重に検討して融資可能な期間を算出していますので、融資期間中は安定的に収益が生まれることを想定しています。

 
耐用年数には、法定耐用年数(税務上の耐用年数)以外に、経済的残存経済的耐用年数という考え方があります。経済的耐用年数の期間は、設備や物件を利用することが可能でキャッシュフローを生み出すと考えられえる期間です。新築や中古も、この経済的耐用年数を精査して、キャッシュフローを生み出す期間内で融資期間が算出されています。

 
耐用年数の算出における課題

仮に1億円を無利息で融資してもらった場合、融資期間(返済期間)が5年であれば、年間2千万円、月あたり166万円の返済になります。これが20年返済になれば、年間5百万円、月あたり416千円になります。融資期間が長いほどキャッシュフローが格段に楽になりますので、万一の事に備えて融資期間を長くして、リスクヘッジしたいという考え方をされる方も沢山いらっしゃいます。また、金融機関側も、リスクの少ない範囲内で、債務者の月々の負担感を軽減して長期の取引をしたいという思惑がはたきます。そのため法定耐用年に近い融資期間が設定されることが多くなります。

 
昨今の不動産投資では、この様な耐用年数の考え方を甘めに設定して、結果的に割高な物件と長期融資をセットにしたような強引な販売方法が問題となっていました。金融庁のアンケート『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果(主なポイント)平成31年3月 金融庁』では、「物件がキャッシュフローを生む期間(耐用年数)をできる限り客観的に検証し、当該耐用年数と整合的な融資期間を設定し、ストレスも勘案した完済までの収支シミュレーションに基づき、賃貸事業としての妥当性や返済可能性を見極めることが重要。」と課題を出しています。

 
太陽光発電投資における融資についても、全期間の収支シミュレーションが重視される様になるかもしれません。なお、当サイト掲載の太陽光発電所は、パネルの経年劣化なども考慮した売電収支シミュレーションを、融資額や年数を変化させた場合でも計算できる様にしていますので、ぜひご活用下さい。

<Point 3>太陽光発電の場合、最長15年が主流

新築の太陽光発電所の場合

新築の太陽光発電所に関する融資は、主に大手信販系と日本政策金融公庫が提供しています。また、地銀なども個別のお取引状況によっては融資する場合があります(太陽光設備が見に行ける範囲にないと融資対象とならないです)。

 
通常は販売店さんと契約する段階で融資審査の申込をされるケースがほとんどだと思いますので、大部分は大手信販系ローンを利用されると思われます。審査も数日以内に行われます。

 
日本政策金融公庫の場合、金利面でかなりメリットはありますが、公庫への申込手続きから始まって、事業計画書の作成や担保設定など、全て自前で手続きをする必要があり、面談も必要になります。このため、身近に経験された方や相談できる先生がいる場合などは、日本政策金融公庫がお勧めです。審査期間は概ね1週間(5営業日~7営業日)程度が必要だと思います。

 
中古の太陽光発電所の場合

太陽光発電所の中古物件市場は、今後拡大すると思われます。基本的に20年間の投資期間のうち、一定の年数、安定的に売電収益があり、また定期的なメンテナンスを実施されており、収益還元した資産価値の算出が容易な場合は、中古物件として一定の金額で売却しやすくなると思われます。

 
新築の太陽光発電所は、利回りが概ね10%前後で販売されているケースが多く、そこから換算すると計算上は10年以内で投資金額の回収ができると考えらます。仮に10年で投資金額が回収できて、その時点での物件価値で売却できれば、売却額がそのまま利益になります。この様な考え方で、ある程度の期間が経過して売電収益を手にしたら、設備を売却して早期に現金に換える場合も多くなってくると思われます。なお、税金などの視点も加えると、さらに複雑になってくると思いますので、実際にはケース by ケースで色々なパターンが考えられると思います。

 
この様な様々なケースを含んだ中古物件に対する融資と融資期間については、まだ十分な実例が少ない状況です。少なくとも新築時の耐用年数を超えての融資は難しいと思いますが、通常の融資対象としての考え方だけでなく、資産価値や担保価値の評価方法なども金融機関によって異なってきますので、中古物件の融資や期間設定も、物件ごとに変わってくることが想像されます。

 
大手信販系ローン

太陽光発電所投資に対するローンとしては、アプラス、ジャックス、セディナ、イオン、オリコなどがあります。
何れも新築物件で、最長15年、金利は2.5%程度が主流になっています。
太陽光発電所を販売されている販売店さん経由でお申込されることになりますので、セミナーなどに参加した際に仮申し込みをして、そのまま審査をしてもらう場合が多いとおもいます。

 
日本政策金融公庫

自営業や企業経営でもしていない限り、日本政策金融公庫は敷居が高く感じるかもしれませんが、国民のための金融機関ですのでご安心下さい。口座や通帳がないだけで、国が運営している金融機関と思えば気持ちが楽になりませんか?

 
さて、日本政策金融公庫で太陽光発電所の融資を受ける場合は、発電所物件が見つかってから相談に行くのではなく、事前に問合せして、どういう書類が必要になるのか?など教えてもらっておいた方が話はスムーズに進むと思います。
金利は概ね1.5%前後です。そして発電所や土地に担保設定が必要で、その手続きも自分ですることになります。

 
また事業計画書という、慣れない書類を提出する必要あるのですが、これもフォーマットに従って空欄を埋めていくだけである程度は完成しますので、あきらめずにやってみましょう!
最近は、太陽光発電所の売れ行きが好調で、物件によってはキャンセル待ちなどもありますので、販売店さんが事前に用意されたローン会社さんで契約することが前提で話が進んでしまうかもしれませんので、その場合は無理をせずに販売店に相談してみてください。

 
投資用収益マンションの場合

投資用の収益マンションを新築される場合が少ないと思います。たいていの場合、中古マンションやアパートの1棟買いになると思います。中古物件の法定耐用年数の計算は新築とは違いますし、経済的耐用年数の計算とも違ってきます。

 
例えば鉄筋コンクリートで築年数10年の場合、47年-10年=37年の耐用年数が残っていると思われがちですが、減価償却の計算の上では、経過年数の20%が加算されます。
つまり、47年-10年+10年×0.2=39年が減価償却の計算の基となる残存耐用年数になります。

 
また金融機関では、この残存耐用年数ではなく、経済的耐用年数を独自に計算して融資期間を定めます。
法定耐用年数の47年を基準にせず、例えば40年を基準としておき、そこから何年経過したか?で計算されるようです。
この場合ですが、40年-10年=30年となります。
となると、30年未満でローンが提供されることになります。

 
太陽光発電所との比較
太陽光発電所に投資する場合、発電所が設定されている地域の通年日照量という基本的な数字を押さえれば、その後の発電量や金額も概ね計算でき、長期計画が立てやすくなり、系統連系した日から、ほぼフル稼働になります。

 
投資用マンションの場合は、資産価値は太陽光発電所より高いと思われますが、入居率の変動によって収益も変動し、周辺にライバル物件が登場すれば、築年数の古い物件はますます不利になってきます。

 


まとめ

太陽光発電所を購入する際の多くのローンでは、耐用年数17年より短い、15年間のローンが提供されています。また、今後、太陽光発電所の中古物件市場も拡大すると思われますが、その場合は、残存耐用年数、残存価値、資産価値などの算出方法、および税を考慮にして場合の実際の利益など色々なパターンから各金融機関によって担保価値の計算が慎重に行われた上での融資判断になると思いますので、一概に「これくらいの金額を、これくらいの利率で何年間のローンが可能」という判断は難しくなってきます。
 
投資用マンションでは、新築一棟売りの案件もありますが、中古物件が主流になると思います。中古マンションの場合、耐用年数の計算方法が新築とは少し違いますので、その点を注意した上で金融機関と相談してください。

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